前のバージョンまで、「アタッシェケース」ではインストールを行うと、以下のプログラムフォルダーには、本体と並んで、DLLファイルがいくつか並んでいました。
AttacheCase.exe
AtcSetup.exe
Microsoft.WindowsAPICodePack.dll
Microsoft.WindowsAPICodePack.Shell.dll
ja-JP\AttacheCase.resources.dll
このファイル構成は、あくまで開発者側の都合であって、ユーザーにとっては良く分からないでしょう。
実行ファイルを別の場所へ移動させて使いたいとき、このDLLファイルも同時に移動させなくてはいけないのか?と迷ったり、煩わしいと思ったりするかもしれません。
実際、付属DLLファイルによっては、実行ファイルのあるフォルダーに存在しないと、正常に動かないものもあり、ユーザーにとっては、ツールのポータビリティが低く、やや使いづらいのではないかと考えました。
というわけで、章題。これを目標にしてみました。そこで考えられる方策をいつくかご紹介したいと思います。
もっとも手軽で定番なのは、「ILMerge」でしょうか。
Microsoft謹製のツールです。リンク先にあるツールをダウンロードしてインストールすると、使えるようになります。いろいろなオプションがあって、それに従って設定すれば、指定の実行ファイルにDLLファイルをマージできるようになります。
コマンドの例としては、以下のような感じです。
"C:\Program Files\Microsoft\ILMerge\ILMerge" /log:ilmerge.log /ndebug /targetplatform:v4,"C:\Windows\Microsoft.NET\Framework\v4.0.30319" /out:AttacheCaseTemp.exe AttacheCase.exe Microsoft.WindowsAPICodePack.dll Microsoft.WindowsAPICodePack.Shell.dll ja-JP\AttacheCase.resources.dll
ところが、これですと、言語ファイルである、ja-JP\AttacheCase.resources.dll
が残ってしまいます。どうやら、国際化対応リソースのDLLは「サテライトアセンブリ」といって、マージのときに除外されるみたいです。
ちなみに「ILMerge」は、Microsoftのプロプライエタリなツールですが、これをオープンソースにして、機能を拡張したものも存在します。「ILRepack」です。
これも、ILMergeと基本的に使い方は同じです。たとえば、以下のようにします。
"..\tools\ILRepack.exe" /log:ILRepack.log /ndebug /targetplatform:v4,"C:\Windows\Microsoft.NET\Framework\v4.0.30319" /out:"C:\Users\mhibara\Desktop\AttacheCase.exe" AttacheCase.exe Microsoft.WindowsAPICodePack.dll Microsoft.WindowsAPICodePack.Shell.dll ja-JP\AttacheCase.resources.dll
ただ、これも、肝心の言語ファイルがマージされません。
では、より簡単で、すべてのDLLファイルを実行ファイル(exe)にマージできないか調べて見ると、Visual Studio 2012以降では標準で付属しているツールの「NuGet」で、あるパッケージ群をインストールすれば可能になるようです。
まず、NuGetとは何か? マイクロソフト公式のウェブサイトにも説明はありますが、以下のウィキペディアの説明の方が簡潔ですので、そちらを参照なさってください。
NuGet
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/NuGet
NuGetは、基本的にVS全体にインストールするというよりも、プロジェクト毎にインストールするようになっています。ですので、以下の画面では、「アタッシェケース」のソリューション(その中に各プロジェクト)が開いている状態で、NuGetパッケージ管理画面を開こうとしています。
次に「参照」から「fody」を検索して、Fodyを見つけたら、NuGetからパッケージを必要とするプロジェクトにチェックを入れ、そこへ「インストール」します。
Fodyとは以下のサイトにも説明がある通り、「Extensible tool for weaving .net assemblies(.NET Frameworkにアセンブリを組み込むための拡張ツール)」です。
Fody
https://github.com/Fody/Fody/
ただ、これだけではまだ不完全です。さらに、次にあるFodyのアドインをインストールする必要があります。
再びNuGetで「Fody Costura」を検索してインストールします。
Costuraとは、プロジェクトで使うリソースをアプリケーション本体に埋め込むためのツールです。
Costura is an add-in for Fody
https://github.com/Fody/Costura/
しかし、インストールしただけでは正常に動作しません。その後に、設定ファイルを所定の場所に置かなくてはなりません。ファイル名は以下の通り、決まっています。
FodyWeavers.xml
というファイルを作り、プロジェクトファイルがあるディレクトリに配置しなくてはなりません。
そのXMLファイルの中身ですが、最低限の設定であれば、以下の内容だけでO.K.です。ちなみに、公式GitHubのウェブサイトを見れば、埋め込みを除外するDLLを指定することができたり、様々なオプションが用意されているので、カスタマイズする場合はそちらを参考になさってください。なお、XMLファイルの文字エンコーディングはUTF-8なのでご注意を。
これにより、
Microsoft.WindowsAPICodePack.dll
Microsoft.WindowsAPICodePack.Shell.dll
の二つが「AttacheCase.exe」埋め込まれて、以下のようにファイルが出力されるかと思います。
しかし、これでも、まだ国際化対応リソース(言語ファイル)DLL、
ja-JP\AttacheCase.resources.dll が統合されておりません。
そこで、もう一つNuGetパッケージをインストールします。「Resource.Embedder」です。
Resource.Embedder
https://github.com/MarcStan/Resource.Embedder
インストールは、以下の通りです。
これにより、ビルドを行うと、すべてのDLLリソースが「AttacheCase.exe」に埋め込まれて、以下のように単一で出力されます。
Fody パッケージ自体は、.NET Frameworkのバージョン依存関係はありませんが、Fodyのプラグインである Costura の最新版の方には、
.NET Framework 4.6
Fody (>= 3.2.6)
といった依存関係があります。
ですので、アタッシェケースは、一応WindowsXP上でも動作するように、.NET Frameworkは、“4.0” でビルドするという縛りを設けているため、
Fody ver.2.5.0
Costura.Fody ver.1.6.2
と、あえて古いバージョンのパッケージをそれぞれ使っています。
以上です。
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